【読書】75歳、交通誘導員 まだまだ引退できません

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会社勤めで65歳定年後、なにをしようか決まっていない人は多いと聞く。
のんびり暮らしたい、趣味に生きたいなど考える人も多いだろう。
それなりに貯蓄のある人であればいい。
そうでない場合、働いてある程度の収入を得ないといけない人も多いはずだ。
定年後、手に職を持っていない人がつける職業というのは限られている。
その選択肢の1つに警備員がある。

この本は、漠然と「定年後は警備員でもやるか」と考えている人に読んでもらいたい。
そんなのんきなことは言ってられないと思うはずだ。
警備員(交通誘導員)は車の交通整理さえできればいいので、気楽な仕事だと思いがちだ。
この本を読むと、そうではないのだということがよくわかる。

筆者は「警備員はサービス業だ。この職業にはコミュニケーション能力が大事だ」と語る。
意外な話だった。
著者自身、警備員になって一番意外に感じたことらしい。

警備員にコミュニケーションが必要なのか?と思う人もいるだろう。
必要なのだ。
ただ単に、誘導灯を振り回していればいいということではなかった。
交通整理をするうえで、車の運転手や歩行者などとのやり取りは発生する。
そこで、トラブルが発生することは多いだろう。
それだけではなかった。
工事現場においては、作業員や現場監督との連携が必要だ。できないと怒られる。
パチンコ屋の駐車場などでは、店員や店長とうまくやらないといけない。
遅刻は厳禁。遅れたらしっかりと謝まる。そうしないと、警備会社にクレームが入る。
現場では、警備員同士の連携も多い。役割分担が必要だ。
専属・選任ではなく、短期間で現場が変わる場合、当然だが関わる人はそのつど変わる。
相手をこちらが選べるわけではない。
皆がいい人ばかりとは限らない。
相手に合わせた対応が必要となる。
こちらが悪くもないのに、理不尽に怒られたり文句を言われたりすることもあるだろう。

筆者は語る。

警備員のストレスの多くは、人間関係にあるといっても過言ではない。
前職も年齢も経験も違う同僚、また現場の職人や作業員とうまく連携をとりながらしなければならない。
警備員によっては毎日現場も同僚も違う。
気の合わない同僚や人使いの荒い監督・親方と組めば気疲れも増す。

60を過ぎるまで、ずっと会社勤めのひとにこれはキツイ。
まして、管理職など部下を持って、部下に指示をしてきた人にとってこれはキツイ。
絶対に嫌になるだろう。
自分ならやりたくない。

筆者は、出版社に勤務し、編集プロダクションを設立し、ベストセラーも手掛けたという。
印税収入もそれなりにあり、良い時期もあった。
ところが、50歳を過ぎて始めた競馬にとんでもないカネをつぎ込んだことで、状況が悪化する。
会社の銀行口座を何度も差し押さえられる羽目になった。
生きていくには食わねばならない。ということで、交通誘導員になることになった。
なぜ交通誘導員をするのか?「カネのため」と言い切る。

カネのためとはいえ、警備員はやりたくない。
この本を読んで、自分が定年後、再就職を考える場合、警備員はやめておきたい。
そのために、定年後の計画を立てて、今からしっかり定年後の計画を立てておかねばと思った。