【読書】考えよ、問いかけよ 「出る杭人材」が日本を変える

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今の日本の教育や社会のあり方にNoを突き付け、グローバルな感覚を持つ人材を育てろと訴えている本。
変わろうとしない日本、変えようとしない日本に警鐘を鳴らしている。

 

日本の大学、企業、政府の問題点をあげ、このままではダメだということに多くのページを割いている。
経済用語や筆者が作った言葉など、印象的な言葉をいくつも出して説明している点はおもしろい。

例えば次のような言葉だ。

・固定化された日本の大学を表す「四行教授」
・研究室に配属され、教授や准教授の下で言われた通りに研究する「家元研究室」
・ひとつの会社や大学で、エレベーター式で上に上がる「単線路線」の日本社会
・異論を唱える義務を放棄する「グループシンク」という病
・規制する側が、規制される側に取り込まれて支配されてしまう「規制の虜」

 

筆者は「東京電力福島原子力発電所事故調査委員会」(国会事故調)の委員長を務めた人物だ。
ここでも、政府や東電のあり方について次のように痛烈に批判している。

2012年7月5日に、「福島第一原子力発電所事故は地震津波による自然災害ではなく、明かな『人災』である」と結論付けた報告書を国会に提出しました。
政府が設置した「政府事故調」や東京電力が設置した「東電事故調」なども独自に調査報告書をまとめましたが、政府や東京電力の責任に明確に踏み込んだのは、私たち国会事故調だけです。
やはり政府と東京電力の事故調は、しょせんは身内による調査だったということでしょう。

国会事故調がまとめ上げた報告書は、事故から10年以上が経っても、ほとんど顧みられないまま棚ざらしにされている。
たいへん残念なことだ。

 

筆者は30代で東京大学の研究室を出て、アメリカの大学で研究を始めている。
異なる知識と技術、背景、価値観を持った人たちに囲まれ、10年以上過ごしている。
そこは、自分の考えをはっきりと述べないと相手にされないし、評価されない世界だった。
その後戻った日本は、違和感だらけの世界だったのだろう。
80歳を超え、どうすれば日本を変えられるかを若者に伝えたくて、筆をとっている。

 

奥ゆかしさとか、他人を思いやる気持ちとか、わびさびとか、日本の文化を全て否定するつもりはない。
ただ、組織の枠にはまり、小さな枠の中だけで上を目指す人ばかりでは日本はダメになってしまうのだろう。

 

出る杭人材を潰してしまわないような組織をつくっていかなくてはいけない。