【読書】キーエンス解剖 最強企業のメカニズム

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「給料の高い会社。給料は高いがさぞかし馬車馬のように働かされるのだろう」
15年ほど前、私がキーエンスを最初に知ったときの印象だ。
当時「30代で家が建ち、40代で墓が立つ」と言われていた。
この言葉から、体育会系、ブラック、成果主義のような会社をイメージしていた。

 

この本には、そんなイメージとは全く違うキーエンスの姿があった。
徹底的な合理主義によって、会社全体の力を底上げして成長している企業だった。

 

キーエンスの取り組みとして、次のことが紹介されている。
・直販(販売店を介さずに営業)
・即納(全商品で即時出荷)
・外報(商談から5分後には報告)
・粗利8割の商品開発
・情報の可視化(顧客のニーズなど)

 

特長的と言えるかもしれないが、割と当たり前のことも多い。
キーエンスが他社と違うのは、それを徹底しているのだ。
徹底してやる文化が、社内に根付いている。
その中でも「即納」についてはとても興味をひく内容だった。

 

キーエンスは「全商品で即納」をアピールしている。
在庫を抱え、客から注文が入れば、翌日には納品する。
それがどんなに高額商品であっても同じだ。
直近の利益よりも、即納が優先される方針が徹底されているそうだ。
これは、利用者にとっては非常にありがたい話だろう。
工場の機器が壊れてすぐに交換が必要なとき、「キーエンスなら大丈夫」という安心感がある。
この安心感のためであれば、多少高くてもキーエンスを選ぶ顧客も多いはずだ。

 

即納へのこだわりが、次のように紹介されていた。

あるキーエンス社員は「10万円のコストをかけてでも1万円の商品の即納を守る」と即納への執念を表現する。
ある商品の出荷が間に合わなさそうな状況になれば、「地方にある部品を社員が新幹線で取りに行き、協力工場に特急対応で生産してもらうこともある」。
それほどまでに「即納」の看板を大事にしている。

 

良いものを開発し、それを合理的に売る文化がキーエンスにはあった。
決して、体育会系でもブラック企業でも無かった。
むしろ、見習うべきところが多すぎる会社だった。