小さい店だったとしても大きい店に勝てるのが今の時代

なぜウチより、あの店が知られているのか? ちいさなお店のブランド学

 

www.sendenkaigi.com

SNSを使った知名度アップノウハウ集。
お店の知名度を上げてお客さんに来てもらうにはSNSでどのように発信するのがよいかを教えてくれている。
正確にはSNSだけではないが、多くはSNSの活用と言っていいだろう。
すでにSNSでお店の情報を発信している人にとっては、何が足りないのか?どうすればいいのか?のヒントがあるはず。
チェックリスト的な利用もできそうだ。

 

SNSの活用を説明しているが、テクニックだけではダメだということも教えている。
結局は、そのお店自体が良いものを売っていることが大前提。
お店の一番のウリを見出し、延ばし、来てもらったお客さんに良かったと言ってもらえることが大事だ。

 

つまり、成功しているお店は、
・自分たちが持っている強みや特徴をよく知り、それを深く追求できている。
・それに加えて、SNSなどを利用してうまくお客さんに自分のことを知ってもらえている。
ということだ。

 

後半、4つのお店の事例インタビューが載っている。
不純喫茶ドープの代表 井川さんのブランドづくりに関するアドバイスが印象深い。

自分の引き出しの中からしか物事って出てこない。
(中略)
だから自分の引き出しの中の好きなものの深度を増やしていくこと。

 

ブランド力を高めようと、他から良さそうなものを持ってきても中途半端で終わってしまう。
自分の中にある得意や好きをしっかりと延ばすことでしか、他との差別化できる何かは出来上がらない。

 

いいもの作ってSNSで発信している(つもりだ)けどうまく行ってない、という人は読んでみるといいかもしれない。

 

摂食障害とはこんなにも辛いものなのか

涙を食べて生きた日々 摂食障害 体重28.4kgからの生還

 

www.futami.co.jp

摂食障害で、拒食症になり、その後、過食症にもなった女性の体験談。

拒食症とは、身体の機能が異常な状態ということではなく、精神障害らしい。
最初にこの説明を読んだとき、精神面がどのように関係しているのかピンとこなかった。
私も気持ちが落ち込んで食欲がなくなることはたまにある。
それに似たようなことなのかな程度の理解でいた。

 

だが、そうではないらしい。
食べものを目の前にしたとき、それを「食べてはいけない」という強烈な感情が沸き起こる。
「食べると太るぞ」「カロリーはいくらだ?」「太って美しくなくなるぞ」
このような、自分へのささやきが聞こえてきて、その結果、食べられない状況に陥ってしまうようだ。

 

治療のために彼女は精神科病院に入院し、黒田先生による治療を受ける。
彼女はとても先生のことを信頼している。
治療にあたる過程で、先生の言葉を何度も思い出して励みにしている。

「食べていくうちに変わる」

 

また、退院が近づいたころ、食べることにまだ悩んでいた彼女に対して黒田先生は

「全部食べなさい」

といい、彼女はそれを素直に受け入れている。

 

拒食症の人にとって食べるということが、回復のための大前提であることは明白だ。
ただそれができないから、やせ細り、精神科病院に入院する。
「食べなさい」という言葉は、ごくごく当たり前の言葉だ。
入院する前、母親などは同じ言葉を口にしていた。
にもかかわらず、彼女は受け入れなかった。
同じ言葉なのに、黒田先生の言葉は聞き入れている。
その言葉の前後にある、言葉や態度、雰囲気で、彼女をその気にさせる力を持っていたのだろう。
彼女は本当に良い先生に巡り合えてよかった。
さすが精神科の先生!ということなのかもしれない。

 

私が、これまで摂食障害に人と接する機会というのは無かった。
ただ、一般人の感覚で摂食障害の人にアドバイスしてはいけないということだけは理解できた。
チープな感想だが、摂食障害の人の気持ちが少しわかった気がする。

 

おもしろい警察小説を読む前に読むまじめ本

公安警察

 

www.hanmoto.com

警察組織で20年間働き、その後小説家として活躍する古野まほろ氏。
いわゆる中の人だった古野氏が、公安の現実を非常にまじめに解説している。
自身の経験と公知の事実を元とした情報で、なおかつ守秘義務の範囲は絶対に出さないというスタンス。
小説と本書ノンフィクションとのギャップはおもしろい。
フィクションで描かれる警察組織と、現実世界とのギャップは、残念でもあり、やっぱりそうかぁとも思う。

 

内容は、とにかく堅い。とにかくまじめ。
小説を読む気分で読んではいけない。
まじめ論調で、公安警察とは何か?を丁寧に解説している。

 

本書は大きく、解説と対談の2つのパートを繰り返す構成。
筆者自身も言っているが、解説のほうは特にかしこまった内容だ。
対談に関しても、フィクション世界の警察をことごとく無いと語っている。

著者  第二に、実に生々しい用語ですが「潜入捜査」。
      (中略)
      ただ私の知るかぎり……
      これ言っていいのかな……
      少なくとも私が現役だった時代だと、潜入捜査は「禁じ手」として実施されていませんでした。
      絶対的禁止。
      よって私も現役時代、そんなものを命じたこともなければ決したこともやらせたいと思ったこともないです。

まじめさ、堅さからは、警察の、公安の事実を知ることができ、本物の警察を知りたい人にとっては良いだろう。
ただ、警察にあこがれを抱いたり、カッコいい警察を求めている人にとっては失望の連続かもしれない。

 

辛い物を食べた後は、甘いものがより甘くなる。
おもしろい警察小説を読む前に、読んでみるのは良いかもしれない。

 

43人いれば一人くらいは参考になるCEOがいるはず

仕事の悩みをあの手この手で解決する! 世界最高峰CEO 43人の問題解決術

 

www.kadokawa.co.jp

誰もがよく知る企業の、誰もがよく知る人物による、お悩み解決事例集。
ただし、海外の企業と人物限定。日本の企業は含まない。

成功した企業、成功した人物も、最初から成功していたわけではない。
多くの苦労や困難に立ち向かって成功につなげている。
仕事をするうえで、人生を送るうえで、苦労や困難はつきものだ。
そんなとき、それを乗り越えるヒントとなる言葉があると助けになる。

 

グーグル元CEO エリック・シュミット氏が友人から言われた言葉

一点に集中し、まずは決断をして、その結果を受け入れる。それを懸命に続ければいい。

 

グーグル創業者 ラリー・ペイジ氏が大事にしている考え

不可能に思えることには、できるだけ無視の姿勢で臨むこと

 

マイクロソフト3代目CEO サティア・ナデラ氏の言葉

必要なのは進歩や発展を推進する「明確なビジョンや文化」であり、そして「社員に希望を抱かせる」ことがリーダーの務め

 

サムスン電子2代目会長 イ・ゴンヒ氏の有名なセリフ

1人の天才が10万人を養う

 

マイクロソフト創業者 ビル・ゲイツ氏が言っていたこと

「できます」「あります」

 

43人いれば43通りの考えややり方がある。
どれか一つは自分に当てはめられるヒントがあるはずだ。

 

【読書】ちゃんと「読む」ための本 人生がうまくいく231の知的習慣

 

www.php.co.jp

私の読書スタイルはいわゆる乱読。
いろいろなジャンルの本を手に取り、ざっと読んだり、ちゃんと読んだり。
途中で読むのを止める時だってある。
本に書かれた大量の文字の中から、少しでも自分に役立つ一文が見つかれば良いな~という気持ちで読む。

 

本書のタイトルを見た時、あなたの読書スタイルはダメだと言われると思っていた。
だって「ちゃんと読むための本」だから。
でも、そうではなかった。大枠は私の読書スタイルに近かった。

 

本書の「ちゃんと読む」とは、
(1) 本の概要を把握する(ブラウジング
(2) その中から気になった部分を読み込む(リーディング)
(3) 更に、自分に必要な部分をピックアップする(切り抜き、刈り込み)
(4) それを自分のものにする
ということだった。

 

特に (3) の切り抜き、刈り込みに関して筆者は徹底しており、ここがまさに「ちゃんと読む」の部分だ。
先ほど、私の読書スタイルに近いと書いたが、明かにここについて、私はこの領域には達していない。
そのため、非常に参考になった。

目安は、マーカーで線を引きたくなるようなテキストが7、8割を占めていて、かつギリギリ記事の趣旨がつかめること。
「これ以上カットしたら何の話かわからなくなる!」と危機感を覚えるくらいが理想です。

ただ削ればいいということではなく、削る過程で何度もその箇所を読み込むことになる。
結果、頭に入るというのが筆者の主張だ。
なるほど。たしかに読んだ本を自分のものにするにはこれくらいやらないといけないのかもしれない。

 

このような作業は、時間がかかるうえに面倒臭い。
ただ、それをやると自分の記憶に残りやすくなるのも実感としてある。

 

ちょっと刈り込みをがんばってみたい。

 

 

【読書】桜華 防衛大学校 女子卒業生の戦い

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1992年4月、防衛大学校に第一期の女子学生が入学。
防衛大学校としては第四十期の年。
それ以降、防衛大学校は男女共学となり、多くの女性自衛隊員を送り出してきた。

 

女性自衛隊員と聞くと、華々しい印象もあるが、多くの苦労もあったことは容易に想像できる。
なんと言っても、今まで男性だらけの世界だ。
簡単には男女平等ということにはならなかっただろう。

 

そんな世界で生きる9人の女性の苦悩や活躍を記したノンフィクション。
自衛隊の活動に限らず、女性としての恋愛、結婚、出産、育児、離婚、家族、病気なども描かれている。

 

自衛隊。そこは圧倒的な男社会。
彼女たちは多くの理不尽な扱いもされてきたようだ。
女を捨てろと言われた人もいた。男女同じ扱いをする前提があるからだろう。
任務によっては女性が付けない任務もある。男女同じと言っておきながら。

 

そんな中でも力強く生きる彼女たちの姿を知ると、尊敬とともに、感謝の言葉を言いたくなった。
「道を切り開いていただきありがとうございます」

 

本書の中で彼女たちが語る言葉の中に、共通する言葉があった。
「自分たちの活躍の場がないことが平和」

自衛隊が国民に感謝される時って、必ず災害などの不幸が起きたとき。だから、私たちが目立たず、平和な状態が維持できていることが日本にとって最高の状態です。

このようなメッセージを読むたびに、ジーンときた。
今の、この世の中があるのは彼女たちのおかげでもある。
感謝。

 

【読書】さばの缶づめ、宇宙へいく

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鯖街道を宇宙へ」を合言葉に、14年の歳月を経て、高校生が作ったさば缶が宇宙に届いた。

 

2001年4月 小坂康之氏が福井県立小浜水産高校に新米教師として赴任
2006年 HACCP(NASAが定めた衛生管理手法)認証を取得
2006年 生徒のもらした一言「ここで作ったさば缶を宇宙に飛ばせるんちゃう?」
2009年 缶づめは宇宙に持って行きづらいということで塩キャラメルの開発
2013年 若狭高校と小浜水産高校が統合し、若狭高校海洋科学科が誕生
2014年 2年生の3人が集まり、さば缶で宇宙食の第2ステージが開幕
2018年6月 JAXAより宇宙日本食の保存試験合格の連絡
2018年11月 サバ醤油味付け缶詰が33番目の宇宙日本食として正式に認証
2019年9月 H-II Bロケット(「こうのとり」8号機)が打ち上げ成功
2020年11月 野口さんが宇宙でさば缶を食べる「美味し~い」

 

字面だけを見ると小坂先生が赴任以来、目標に向けて着々と歩みを進めたように見える。
でも実態はそうではなかったようだ。
本書を読むと、常に目標に向かって力強く進みつづけたわけではないことが分かる。
その中には、高校の統廃合という、一人の生徒や先生としてはどうしようもできない問題もあった。

 

高校生は3年で卒業する。
鯖街道を宇宙へチームは、代替わりしながら地道に活動を続けた。
認証を受けた時が第13代チーム。
本書に紹介されていないチームも多くある。
目立った活動はしていなかったかもしれないが、彼ら彼女らがいたからこそさば缶は宇宙に行けた。

 

小坂先生の言葉と共に、次のように紹介されている。

「若狭高校統合前からずっと、教員同士の勉強会をめちゃくちゃ行って、学びを常に見直して進化させています。色々なことを網羅して、今の宇宙食がある。単純に宇宙食がめきめきと発展してきたわけではない。14年かけたからこそ、やっと今、『醸成』したのです」。

 

「さば缶を宇宙に飛ばせるんちゃう?」という言葉をきっかけに、さば缶を宇宙に届けようという統一目標ができた。
ただ、その目標は、その時々における生徒や先生の唯一の目標ではなかった。
忘れされれることもあったが、何かをきっかけに思い出され、そこにいる人たちの指標になってきた。
そうして、目標に対する濃淡を繰り返しながら、同じところに向かい続けた。
結果、14年の時を経て高校生が作るさば缶が宇宙に届き、宇宙飛行士野口さんが食べた。

 

さば缶は今も進化を続けているという。
さば缶も若狭高校も、今後がさらに楽しみだ。