【読書】さばの缶づめ、宇宙へいく

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鯖街道を宇宙へ」を合言葉に、14年の歳月を経て、高校生が作ったさば缶が宇宙に届いた。

 

2001年4月 小坂康之氏が福井県立小浜水産高校に新米教師として赴任
2006年 HACCP(NASAが定めた衛生管理手法)認証を取得
2006年 生徒のもらした一言「ここで作ったさば缶を宇宙に飛ばせるんちゃう?」
2009年 缶づめは宇宙に持って行きづらいということで塩キャラメルの開発
2013年 若狭高校と小浜水産高校が統合し、若狭高校海洋科学科が誕生
2014年 2年生の3人が集まり、さば缶で宇宙食の第2ステージが開幕
2018年6月 JAXAより宇宙日本食の保存試験合格の連絡
2018年11月 サバ醤油味付け缶詰が33番目の宇宙日本食として正式に認証
2019年9月 H-II Bロケット(「こうのとり」8号機)が打ち上げ成功
2020年11月 野口さんが宇宙でさば缶を食べる「美味し~い」

 

字面だけを見ると小坂先生が赴任以来、目標に向けて着々と歩みを進めたように見える。
でも実態はそうではなかったようだ。
本書を読むと、常に目標に向かって力強く進みつづけたわけではないことが分かる。
その中には、高校の統廃合という、一人の生徒や先生としてはどうしようもできない問題もあった。

 

高校生は3年で卒業する。
鯖街道を宇宙へチームは、代替わりしながら地道に活動を続けた。
認証を受けた時が第13代チーム。
本書に紹介されていないチームも多くある。
目立った活動はしていなかったかもしれないが、彼ら彼女らがいたからこそさば缶は宇宙に行けた。

 

小坂先生の言葉と共に、次のように紹介されている。

「若狭高校統合前からずっと、教員同士の勉強会をめちゃくちゃ行って、学びを常に見直して進化させています。色々なことを網羅して、今の宇宙食がある。単純に宇宙食がめきめきと発展してきたわけではない。14年かけたからこそ、やっと今、『醸成』したのです」。

 

「さば缶を宇宙に飛ばせるんちゃう?」という言葉をきっかけに、さば缶を宇宙に届けようという統一目標ができた。
ただ、その目標は、その時々における生徒や先生の唯一の目標ではなかった。
忘れされれることもあったが、何かをきっかけに思い出され、そこにいる人たちの指標になってきた。
そうして、目標に対する濃淡を繰り返しながら、同じところに向かい続けた。
結果、14年の時を経て高校生が作るさば缶が宇宙に届き、宇宙飛行士野口さんが食べた。

 

さば缶は今も進化を続けているという。
さば缶も若狭高校も、今後がさらに楽しみだ。