【読書】思春期の心と社会 メンタルヘルス時代の思春期を救え

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思春期を再定義し、ひきこもりとの関連性が説かれている。

 

思春期といえば、中高生のころに訪れる精神が不安定な時期だと思っていた。
中高生が、やたらと大人にかみついたり、無視したり、非行に走ったりする時期だ。
本書では、思春期は大人でも子どもでもない、両者の中間に位置づけられる固有の期間であるとしている。
また、思春期は私たちが考えるよりもかなり長く、18歳や20歳になったから終わるものではないとも書いている。

 

では、思春期とはいつからいつまでなのか?特にいつになったら終わるのだろうか?
一つの目安として、就職をゴールとみなすことができるようだ。
大人のスタートが就職だとすれば、逆に就職できない人はいつまでも思春期にいると言える。
筆者は、ひきこもりは思春期における症状が多様化した1つと話す。
おもしろいし、なるほどと思った。
確かに、ひきこもりと思春期は似ているところがある。

 

思春期は、人が成長するうえで欠かせない時間だとすると、問題ない症状といえる。
でも、ひきこもりは困る。思春期だと思っていたけど実はひきこもりでしたというのは困る。
思春期において、若者が問題ない状態かどうかを見極める方法として次のように書かれてある。

思春期という特別な期間の特別な事情を踏まえて心の健康の本質を考えていくと、

現在の適応状態や結果よりも前に進むモチベーションがあること

悪さをしても、不安を持っても、今に満足していなくても、それがダメということではないのだ。
前に進む状態になっていれば、思春期としては問題ない状態なのだ。
逆にダメなのは、動こうとしないこと、変わろうとしないこと、不満を持たないことだろう。
そういう若者を見た時には気を付けないといけない。

 

筆者は、多くの若者と接してきた精神科医だ。
思春期や心に関する著書も多数ある。
多くの若者を見ながら、思春期に対する世の中の扱いについて何か違和感があるのかもしれない。

 

「昔と同じような対応ではダメだよね。昔のことも念頭に、今に合った思春期の対応をしようね」
と、精神科医の同志たちに呼び掛けているように感じた。