【読書】独占告白 渡辺恒雄 戦後政治はこうして作られた

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渡辺恒雄氏、通称ナベツネ
私の中では、読売巨人軍のオーナーや横綱審議委員としてのイメージが強い。
野球や相撲に関して、身勝手で歯に衣着せぬ発言をする人という印象だ。
なぜ、こんな人が日本を代表する新聞社のトップだったのだろうと思うことは多々あった。

 

そんな渡辺氏を、NHKが長きに渡り取材し、ドキュメンタリーとした。
そこで語られたことに加え、番組に収められなかったことが本書にまとめられている。

 

まず、本書を読むと、渡辺氏は非常に有能な記者だったことが分かる。
特に政治記者としての手腕はすごい。
単なる新聞記者でありながら、その新聞記者が、政治家に大きな影響を与える存在になり得ることに驚いた。
政治家の懐に入り、機密情報を手にするまでに関係性を築ける「人たらし」だった。
テレビの姿からは想像つかない。

 

渡辺氏の、思考の根底には「戦争反対」があるという。
同時に、それは、時代を共にした政治家にもあるようだ。
政治を見るうえで、保守とかリベラルとか、憲法改正とか靖国参拝とか、いろいろある。
でも、渡辺氏や昔の政治家には、大前提に、自身の戦争体験に基づく戦争反対の考えがあるのだ。

 

渡辺氏の盟友である中曽根元首相が、97歳の時に新聞に寄稿した文章が紹介されている。

やはり、あの戦争は何としても避けるべき戦争であった。地上戦が行われた沖縄をはじめ広島と長崎での原爆の投下など三〇〇万人を超える国民が犠牲になり、日本本土への相次ぐ空襲によって国土は焦土と化した。
政治にとって、歴史の正統的潮流を踏まえながら大局的に判断することの重要性を痛感する。歴史を直視する勇気と謙虚さとともに、そこからくみ取るべき教訓を学び、それをもって国民、国家の進むべき道を誤りなきように導かなければならない。政治家は歴史の法廷に立つ。その決断の重さの自覚無くして国家の指導者たり得ない

 

2023年、戦後78年。戦争を体験した日本人はもう多くはない。
記憶にある人はなお少ない。
当然、政治の中心にいる人たちの多くは戦争未経験者だ。

 

そのような人たちが、今後どのような考えの下で日本のかじ取りをしていくのだろう。
戦争はダメだと頭で分かっていることを、自分事として捉えることは大事だと思う。

 

アジア圏において、中国が軍事力で幅を利かせている。
ロシアは戦争真っただ中だ。
北朝鮮は何をするかわならない。
このような脅威とも対抗しつつ、今後も、戦争絶対反対の考えで国を動かしていってもらいたい。